万年筆のインクが出ない、もしくはインクフローが悪くてお悩みではありませんか?
インクが出ない万年筆はもともとの「書く」という機能性を失っています。
しかしある対処を行うだけで、インクが出るようになる、もしくはインクフローがよくなる可能性もあります。
今回は長年使用したものから新品のものにまで出来る万年筆のインクが出ない時の対処法を紹介します。
もちろんパイロットやプラチナなどの数多くのブランドに共通しているものなので、必見の内容になっています。
目次
対処の流れ
万年筆のインクが出ない時の対処法を紹介しますが、まずは自分でやってはいけないことをお伝えします。
自分でやってはいけないことは分解です。
万年筆の構造は非常に複雑で、各パーツも繊細です。
1つパーツを失うだけで、万年筆が使い物にならないことは多々あります。
また組みなおした後に書き心地が悪くなる可能性もあります。
自分で万年筆は決して分解してはいけません。
ペン先を調べる
まずはニブと呼ばれる万年筆のペン先を調べましょう。
ニブはフィード(ペン芯)の上に座ってないといけません。
そうすることでニブスリットがペン芯と直線を保ち、インクをニブまで潤滑に送ることができるからです。
画像左はフィードとニブスリップが一直線になっている良い状態、右は一直線になっていないので悪い状態ですね。
もし右のような状態になっていたら、手でニブとフィードを調整して画像左の状態にします。
ニブはまたフィード表面にしっかりとくっついてないといけません。
画像左が良い状態で、右がニブがフィードから離れている悪い状態。
もし右の状態になっていたら、以下のステップで直します。
1.指先をフィードに置いて、ニブの先を優しくしっかりと机などの端に押さえていきます。力加減を誤るとニブが折れる可能性もあるので十分に気を付けてください。
2.ニブを机などの表面に優しく押し付けながら、ゆっくりと回します。
3. 2を繰り返し行い、ニブとフィードの隙間が埋まったかどうか毎回確認します。
4.ここまでのステップでニブがかすかに曲がる可能性があります。もしそうならば、指先をニブの上に置いて、キュッキュッと優しく押します。
必要ならば、これを数回繰り返してください。
ニブスリットをチェック
インクの出が悪い原因にニブスリットがあるかもしれません。
まずはニブが綺麗で乾いている状態で、明かりに向けてニブスリットを確認します。
スリットは画像左のように先端にむかって狭まった状態がベストです。
真ん中のように先がくっついていたり、右画像のように先が広まっているのは悪い状態でインクフローを悪くします。
ニブの先端がくっついているならば、以下のステップで対処します。
1.指先を使い、ゆっくりとニブの先端を机などの表面に押し付けます。
こうすることによってニブの先端が1~2㎜広がります。
2.そして数秒間押さえ、放します。
3.2までのステップを繰り返し行い、定期的にチェックを行います。
これは少し時間がかかるかもしれませんが、早くしようと強く押し付けては絶対にいけません。
ニブの先端が広がっているならば、以下のステップで対処します。
1.指先をフィードの上に置き、ニブを机の上などに優しく押さえつけます。
2.先端を机の上などに優しく押さえつけます。
そしてニブを横から横へと動かし、数秒間押さえます。
これを必要に応じて繰り返します。
3.指先をニブのサイドに置き、ニブのもう1つのサイドを机などに数秒間優しく押さえつけます。
もう片方も同様に行います。
4.先端の両端をしっかりと握り、2本の指先でしっかりと5~10秒程度押さえます。
これは柔らかなタオルなどと共に行うと指が痛むことはありません。
洗う
万年筆を洗うことでインクが出ることがあります。
万年筆の洗い方は2種類ありますが、インクの出が悪いときは以下の6ステップで洗うことがおすすめです。
1.ニブを緩めて胴軸から外します。
残ったインクはもったいないかもしれませんが、処分します。
ニブセクションを画像のように水道水で洗います。
これでインクは簡単に洗い流すことができます。
注意することは熱湯は絶対に使用しないことです。
冷たい水か室温程度の水を使用しましょう。
2.コンバーター、もしくは胴の口を水が入ったコップの中に置きます。
インクが水にしみこまなくなるまで、水を入れ替え綺麗にします。
3.コンバーター、もしくは胴をニブとくっつけます。
そしてニブを水が入ったコップの中に置きます。
4.コンバーター・カートリッジ、もしくは吸入式万年筆ならばフィリング・システムを利用して水を出し入れします。
これはインクが付いた水が出なくなるまで繰り返します。
もし水がインクで汚れたら、定期的に変えてください。
繰り返し行うことで万年筆の内部を綺麗にすることができます。
5.ニブセクションをコップの中に入れ、数時間そのままにします。
これでインクの汚れはほぼ完ぺきに取り去ることが出来るでしょう。
6.万年筆が完全に乾いたら、再び組みなおします。
ペンクリニックへ持っていく
これらの対処法を行ってもインクが出ない時はペンクリニックへと持っていくのをおすすめします。
ペンクリニックとは万年筆の無料調整・修理を行ってくれるイベントのことです。
セーラーやプラチナなどの大手メーカーが全国で定期的に開催しています。
このペンクリニックへ持っていくことで、万年筆の修理を行ってくれます。
詳しい日程や詳細はセーラーやプラチナなどのホームページを確認してみてください。
インクを変えてみる
万年筆にはインクフローがいいものと悪いものがあります。
それと同様にインクにもインクフローを良くするものとそうでないものがあるのです。
インクを変えること自体は根本的な解決にはなりませんが、応急処置にはなります。
流れがいいインクを見つけるのは難しいですが、ウォーターマンのインクは全体的に流れがいいです。
その他、パイロットの色彩雫やセーラーのインクも流れがいいと評判です。
もしもの時のために、これらのインクを常備しておくといいですね。
ちなみにですがインクフローが多すぎるというときは、少し乾燥気味のインクを使用するのがいいです。
乾燥気味のいいインクはペリカン4001やラミーのものがおすすめです。
おすすめインクについては下記記事にて紹介しています。
万年筆の長期保存方法
万年筆のインクが出ない原因の多くは、内部のインクが固まってしまうからです。
一番の対策は毎日使用して、定期的に掃除することです。
もし長期間使用しない予定なら、万年筆からインクを取り除き、すでに紹介した掃除を行うことです。
これで長時間保存しても内部でインクが固まることはなくなります。
インクが出にくい新品の万年筆の対処の仕方
新品の万年筆、特にカートリッジ式万年筆はインクが出にくいです。
これは欠陥品以外はインクが浸透するのに時間がかかることが原因です。
ほとんどの場合は時間が解決してくれますが、すぐに万年筆を使用したい方もいると思います。
そんな方はインクカートリッジの真ん中付近を指でほぐすように優しく押してください。
ペン先にインクが浮くまでゆっくりと押すことで、すぐに新品の万年筆を使用できます。
まとめ
万年筆のインクが出ない時の対処法を紹介しましたが、絶対に無理をしてはいけません。
もし少しでも不安を感じたら、ペンクリニックへ持っていきましょう。
また定期的なメンテナンスも重要です。
月に1回は万年筆の中まで掃除すると、長期的に楽しむことができます。